1968年・日活/監督・松尾昭典/共演・高橋英樹 野川由美子 杉良太郎 山本陽子 沢たまき
大正中期。やくざ稼業に嫌気がさしてカタギとして出直そうと故郷に戻った矢先、父がわりのような店主が死に、あこぎな地元やくざとの対決を余儀無くされる。敵の罠により、恋人の弟には仇と恨まれて、渡世人時代のライバルにも命を狙われるが・・・。旭さんのクールっぷりも光る美しき仁侠アクション。
【感想】
これはもう「ガマン」の映画です。
のっけから、めっちゃ強えとこ、ばーっと見せておいて、一転、「カタギんなります、もう悪さはいたしません」、と封じる。さあ、いつ我慢の限界がくるのか、どこでキレて暴れてくれるのか、こっちも我慢しながら観なけりゃなりません。きびしーっっ。
そして、刺青。これが、絶品。いろっぽいっすねえ。「脱げ」と言われて、おずおずと脱ぐ。このときの風情や、よしっ。で、花盛り!と。地味な着物をはらりと脱げば、振袖顔負けの艶やかさ。これぞ、男の華っ。今時のタトゥーなぞ、馬鹿犬の無駄吠えさっ。かーっっ、俺もアキラさんのナイスバディにお花模様をかきかきしたやーっっ。
汚ねえいやがらせを受けようと、三下どもに囲まれようと、我慢我慢。もうヤクザじゃないんだもんね、カタギだもんね、と、しらっとカワす時の表情が、あなモドカしやっ。
けどクールで、ぐーっ。
さて、いよいよ我慢の糸を切ってからは、やあ、強えこと強えこと、砂浜からざざっと海にまで走りこんで、ぶつっとね、血の赤がね、いきおいよくてヨロシイ(笑)。
で、またこれが喪服ってとこがねえ、まあ紋付袴姿ですが、キリュウイン花子かよっ、というね。ソソります。
夜明けの一番太鼓を打つ姿も、あな、りりしっ。
しかし高橋さん、オイシイ役、もってってましたね。元・男爵。武器・花札手裏剣。しかも情婦、沢たまき、ですから(笑)。
で、杉サマはね、すでに目力こってり。もちっとフレッシュさプリーズ。
なんだかこの作品は、我慢する役にアキラさんがついて、高橋さん風来坊、杉さま若造、という、裕次郎さん抜きの「鉄火の花道」、みたいな感じもしました。
もちろんテイストは全っ然違いますが。
町がいい。色がいい。人の心のしっとり感がいい。派手じゃないからこそ、鮮やかさが目に残る、実に美しい仁侠映画でした。けど仁侠といっても、ちっとも泥臭くなくて、どこかファンタジックで暗さのないエンターテインメント。
まっすぐな若者の生き方の香りがする。そこが日活っぽいかも。
けど、町中のマドンナ・野川さんより山本さんの方が美人てどーなんすか?
いや、好みの問題っすが(笑)
アキラさんのほよほよっちいヒゲ(笑)と抑えの利いた変容ぶりは必見。
ぜひぜひっ。綺麗だじょう。
2004/09/29
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